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謙信不犯伝説
・謙信は不犯の名将とよばれ、さまざまな説がなされている。


 謙信といえば、不犯の名将とよばれるのが定説となっている。はたしてそうだったのだろうか。 これは、謙信が生涯、妻を娶らず、側室ももたず、その結果として実子もなかった、 という家庭的な事実より生まれた伝説であろう。
 歴史小説などによれば、謙信の幼少期は不遇で、悲劇的だったといているものが多い。謙信の母もかれが 四歳のときに病床につき、幼い謙信は実母から遠ざけられたという。さらに、母の死後、父為景は謙信のことを 邪魔もの扱いをし、結局、謙信を寺に入れてしまった、などと書かれている。 しかし、小説の話は話を面白くした、あくまでもフィクションに他ならない。

恵まれた家庭環境

『上杉系図』 『上杉年譜』などによれば、謙信の生母は「虎御前」と呼ばれ、永禄十一年(1568)、謙信が三十九歳のときに 死去している。彼女は夫の為景が戦没したあと剃髪して、青岩院と号した。そして、亡夫の冥福をとむらいながら、 なお三十二年間を生き、わが子謙信が大活躍している最中に六十余歳の老齢で病没した。
 謙信は父為景とは早く死別したが、母親は壮年期の三十九歳まで健在であったことは、 小説に描かれるようなドラマチックなものではなかったろう。さらに、 謙信には上田の長尾政景に嫁ぎ、謙信の養子となる景勝を生んだ仙桃院という実姉もいた。
 仙桃院は慶長十四年(1609)に八十余歳の高齢をもって、出羽の米沢で死去するほどの長生きをしていた。 この実姉仙桃院が謙信に与えた精神的影響は、ぞの母青岩院の場合とあわせて、 かなり大きなものであったようだ。
 つまり、謙信は生母、実姉といった肉親の女性の愛情に恵まれた男であったと考えられるのである。 そして、幼少の頃より寺での修行を経験した謙信は、肉親の女性以外の愛に溺れることもなく、 その存在をもさしては必要としなかったのではなかろうか。 謙信が生涯を独身で過ごし不犯の名将などと呼ばれたのも、 このような恵まれた家庭環境に起因していたのではなかったろうか、と考えられる。
 このように肉親の女性たちの愛情に恵まれていたであろう謙信は、生母青岩院の影響を受けて真言宗に 帰依することが篤かった。 そして、七歳のとき春日山城の下の林泉寺に入り、天室光育について学ぶことになる。 室町時代の武将の家では、将軍家をはじめとして嫡子以外の男子は寺に入ることが多かった。それは、 家督相続における対立を未然に防ぐこと、合戦を生業とする武家において後生を頼む意味合いがあった。 謙信の入山もまた、この例にもれるものではなかっただろう。
・謙信の軍旗に書かれた「毘」の一字

律儀に過ぎた生涯

 『上杉年譜』によれば、謙信は春日山城の北の丸に大乗寺という真言宗の寺を建立し、 大乗寺の長海和尚から真言密教の戒律を授けられた。その戒律のなかには女犯戒、肉食妻帯戒などがあって、 戒律を守るためにはつねに護摩を修し不浄を焼き浄める修法を行うのであった。  生来、律儀者の謙信は、このような戒律がある以上、これを厳守しようと努力したのであろう。 加えて、父祖以来、苦しめられた一向宗の在俗的な信仰に対する、根強い反発もあったと考えられる。
 謙信の不犯主義については、江戸時代の大学者新井白石も、「謙信は、つねに持戒して伝法灌頂を行うこと 凡そ四ケ度に及び、あるいは護摩を修し、あるいは参禅し、肉食と色欲を断ったために、子がなかったというが、 思うに、弓矢の冥助を祈り、かかる行いを敢えてしたことは、昔から例がある」と主張している。 つまり、いくさに必勝するためにも、不犯戒を守ろうとつとめたらしい。
 ところで、謙信が妻妾をもたなかった理由として、男色説、不能説、性病説、はては女人説などを 主張するものがある。これらは概して史実にきわめて無責任な立場の作家に多く、 一顧に価しない妄説であることはいうまでもない。
 さて、謙信は生涯まことに不犯を通したのであろうか。『越後軍記』『上州治乱記』などの史料によれば、 謙信には親しかった女性が少なくとも三人はいたようである。その一人は上杉家の重臣直江実綱の姉娘、 もう一人は関白近衛前嗣の妹絶姫、もう一人は上野国平井城主千葉采女の息女伊勢姫であった。 彼女たちとどのような関係をもっていたのかを知るすべはないが、 全く不犯ではなかったと考えられる。子を生さなかったのは、医学的に子胤がなかった可能性 もあったのではなかろうか。
(資料:桑田忠親氏の論文を参考にさせていただきました)
  

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